「幾久しく」という言葉を使ったことはありますか。
「初めて聞く」という人もいれば、「昔聞いたことがある」「使ったことはあるけど意味まで知らない」という人もいるのではないでしょうか。
ある特定の場面でよく使用される言葉なのですが、その使い方や語源を知っておくと、とても便利な言葉でもあります。
この記事では「幾久しく」の読み方や使い方をくわしくご紹介します。
マスターするとスマートに使いこなせるようになります。
またNGワードもご紹介しますので、TPOによって言葉を使い分けることができる気配り上手になりましょう。
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目次
幾久しくの意味と読み方
幾久しくは「いくひさしく」と読みます。
「いつまでも変わらないさま」や「どこまでも続いていく様子」「末永く続くさま」といった意味が込められた言葉です。
漢字ごとにどんな意味が込められているのか見ていきましょう。
「幾久しく」の「幾」とは、数量がはっきりしていないけれどもとてもたくさんのものを指すときに使用される言葉です。
「いくつあるの?」「いくらですか」という言葉に使用される「いく」という言葉も「幾」という感じをあてます。
「久しく」という言葉は、「久しい」という言葉です。
とても長い年月が経過することを示す言葉です。
あいさつ文や手紙に好んで使用される言葉になります。
とくに結納の際の口上や結婚式の挨拶などで好まれて使用されます。
「幾久しくお幸せに」や「幾久しくお納め下さい」など、あいさつ文や手紙の末尾につけるとすわりがよく無難なことから、使い方をマスターしておくとたいへん便利です。
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幾久しくの語源は大和言葉
幾久しくは大和言葉の1つですが、いったいどんな語源があるのでしょうか。
その由来や、大和言葉について解説します。
大和言葉とは何か
「幾久しく」という言葉は、奈良時代から日本で使われてきた日本固有の言葉です。
このように奈良時代から使用されている言葉を「和語」もしくは「大和言葉」と呼んでいます。
「和詞(やまとことば)」と書くこともあります。
最近では「コンプライアンス違反かどうか会議で話し合う」「エビデンスに乏しくない?」「それではこの件をクロージングさせて頂きます」というように、外来語を多用することも多いです。
しかし日本独自の言葉には日本の独特な風土を活かした、多彩な表現があります。
大和言葉は自然や時の移ろい、季節などを優雅に表現したり豊かな感情を表したりするのに適した言葉が多いです。
また柔らかな響きがあり、最近では再び脚光を浴びるようになってきた言葉です。
幾久しくの語源
「幾久しく」は「時間」を示す大和言葉です。
大和言葉「幾久しい」の連用形で形容詞なのですが、現代では副詞のように用いられるのが一般的です。
後ろにつく言葉を強調する効果があります。
「幾」という言葉はとてもたくさんの、という意味があります。
「ひさしい」という言葉には時間の経過を表す性質があり、和歌などでは恒久の未来を描く場面でよく使われます。
これらふたつの言葉が重なり、「とても長い年月」を示す大和言葉となりました。
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他にもこんな言葉が大和言葉
「幾久しく」以外にも、時間を示す大和言葉があります。
夜明けを意味する言葉として「あかつき」「あけぼの」といった言葉があります。
また日が暮れて暗くなり始めた時間帯のことを「宵の口」(よいのくち)と呼びます。
時間以外にも自然や季節を表現する大和言葉はたくさんあります。
たとえば満開の桜が周囲を明るく照らし出すほどに美しい姿を「花あかり」とよびます。
また春先の、霧に包まれて霞むように滲んだ光をこぼす月の姿を「おぼろ月」と呼んだりします。
「良い天気ですね」を大和言葉で表現すると「いいひよりですね」となります。
幾久しくの類語はコレ
大和言葉として再び注目を浴びてきている「幾久しく」という言葉ですが、日常生活ではあまり使用しません。
たとえば「幾久しくよろしくお願いします。」という言葉は、「末永くよろしくお願いします。」「いつまでもよろしくお願いします。」「永遠によろしくお願いします。」「永久によろしくお願いします。」といった表現で使用されることが多いです。
その他にも「幾久しく」は「千代に」(ちよに)「永永」「何時も」(いつも)という言葉で代用できます。
特に「千代に」という言葉は国家の歌詞にも見られる長い時間の経過を示す言葉です。
またお祝いの席では幾久しくという言葉以外にも、長い時間を示す言葉として「久遠に」(くおんに)「とこしえに」「たゆみなく」といった表現が使用されます。
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結納の祝詞に欠かせない幾久しくの使い方
結納の祝詞として「幾久しく」は欠かせませんが、どのように使用されるのか見ていきましょう。
なぜ結納の席で幾久しくが使われるのか
結納を行う時に、両家の間で取り交わされる言葉に決まった口上があります。
結納品を贈る家(基本的には新郎の家)が「幾久しくお納めください」と口にします。
それを受け、結納品を受け取る側(基本的には新婦の家)は「幾久しくお受けいたします」と答えるのがしきたりです。
もう少し丁寧に「幾久しくめでたくお納めください」というときもあります。
いずれの場合も直訳すると「末永く納めて下さい」「末永く受け取ります」という意味です。
普段聞き慣れない言い回しなのでちょっっと奇妙に感じるかも知れませんが、これは結納品だけではなく両家の縁が末永く続くように、つまり円満な婚姻関係が続きますようにという験担ぎの言葉になります。
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結納の祝詞で幾久しくを使う場面
結納の品は、嫁入り道具やその費用、もしくは婚礼の品が一般的です。
結納式での受け渡しは現物ではなく目録を用意します。
結納の儀式は仲人が立ち会い司会のような役割を果たしますが、最近は仲人をたてない結婚も一般的になっており、仲人不在の場合は両家だけで集まって結納の儀を執り行います。
また会場も新婦の家を新郎の家が訪問して行うものでしたが、料亭など会食に便利な場所を借りて行うことも多くなっています。
結納で執り行う儀式については、仲人がいてもいなくても同じです。
仲人がいない場合について解説します。
まず新郎の父が「幾久しくお納めください」といって目録を新婦の父に差し出します。
このとき目録は手渡しではなく、広蓋(ひろぶた)に載せます。
新婦の父は目録を受け取り、新婦の母に目録を渡します。
そして新婦の母は新婦本人に目録を渡して回覧します。
その後新婦の父が「たいへん結構な品々をありがとうございます。幾久しくお受けいたします。」と口上を述べます。
それから「こちらが結納の受書でございます。」と新郎の父に渡し、もう一度互いに「幾久しくよろしくお願い申し上げます。」と挨拶をしておわりです。
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結婚の挨拶に幾久しくよろしくお願いしますは定番
普段の日常会話で使うことはほとんどない「幾久しく」という言葉ですが、結婚にまつわる挨拶には欠かせない言葉として重宝します。
「幾久しくお幸せに」という言葉は、手紙の結びの挨拶としても使用されますが、結婚の披露宴の席でお祝いの口上としてよく使用されます。
「今後共幾久しくよろしくお願いします」は結納の席でよく使用される言葉ですが、結婚に際して新郎新婦の両家が互いに結びの口上として使用することもあります。
「今後とも末永く、いつまでもよろしくお願いします。」という意味で使用されます。
また結婚式を挙げる際には新郎新婦両家の親族が一堂に会するので、お互いの親族紹介を控え室で行うのが一般的です。
時間の関係もあり詳しい自己紹介までは行わず、「叔父」「従姉妹」といった新郎新婦との続柄と名前の紹介を行った後、全員揃って「幾久しくよろしくお願いします」と挨拶するのが験担ぎとしておめでたい席にふさわしい口上とされています。
結婚だけではなく、今後も長く関係を続けていきたい相手に対して挨拶として使用されることもあります。
もう少し丁寧な言葉としては「幾久しくご懇情を賜りたく」という表現があります。
こちらは披露宴の案内状によく使用される文言です。
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幾久しく末永くお幸せにを英語でいうと?
日本では結納や結婚の口上として使用されることが多い「幾久しく」という言葉ですが、英語で表現して婚約指輪や結婚指輪に刻んでいるという人も多いです。
どのような表現があるのか解説します。
everlastingly
everlastinglyには「永遠に」「永久に」「いつまでも」「変わりなく」「果てしなく」といった意味があります。
幾久しいの「久しい」という部分にかかる言葉です。
「profit thee everlastingly」で「あなたが永遠に得ることのできる良きもの」という意味があります。
forever
foreverには「永遠に」「永久に」「いつまでも」「常に」「絶えず」という意味があります。
つまり「Several a long time forever you happy」だと、「永遠の幸せがあなたに訪れますように」という意味になります。
また「I’m yours forever」だと「永遠にあなたを愛しています」という意味になります。
eternally
eternallyには「限りのない時間」「いつまでも」「絶え間なく」という意味があります。
長い時間がずっと続くことを示す言葉ですので、幾久しくをまるごと英単語に変換したらeternallyが最も近い意味合いとなります。
「I am eternally happy」で「いつまでも私は幸せです」という意味になります。
また「 love continuing eternally」で「永遠に続く愛」となります。
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幾久しくが使われるシーンで絶対使ってはいけない5つの忌み言葉
「幾久しく」が使用されるのは結納や結婚に関わる場面、または重要なビジネスシーンなど、相手との関係性が壊れては困る場面になります。
このような場面で決して使用してはいけないとされる言葉が「忌み言葉」(いみことば)です。
忌み言葉は「知らなかった」では済まされず、うっかり使用してしまうと社会的信用度が下がったり相手との関係を壊してしまったりと要注意な言葉です。
どんな言葉が忌み言葉とされているのか解説します。
別れを連想する言葉
結婚や結納の席では特に「別れる」「切れる」「切る」といった、「別れ」を連想させる言葉を使用しないようにしましょう。
たとえば「新郎新婦は新たなスタートを切ろうとしています」というあいさつ文には「切ろう」という忌み語が使用されていますのでふさわしくありません。
「新郎新婦は新たな一歩を踏み出そうとしています」というように言い換えましょう。
同じ理屈で、「再び」や「繰り返し」という言葉も避けられています。
これは「再婚」や「離婚」を連想する言葉だからです。
「料理が冷める」という言葉も、夫婦仲が冷え込むことを連想してしまうことから「料理が温かいうちに」と言い換えた方がいいです。
不幸や不吉を意味する言葉
お祝いの席では「死ぬ」「悲しむ」「負ける」といったマイナスのイメージのある言葉を避けます。
また「忙しい」「生きている頃」「失う」「壊す」などの言葉も忌み言葉と呼ばれています。
おめでたい席ではもしものときの失敗など暗い未来を想起させるような話は避け、ひたすら明るい展望に満ちた話だけを心がけておいた方が無難です。
下ネタ
「ウケる挨拶をしよう」と考えた結果、下ネタを織り交ぜた挨拶をするひとがいますが、これはNGです。
下ネタは誰もが楽しくなるような話題ではなく、公然の場で口にすることは日本では長らくタブーとされてきました。
下ネタを人前で口にすると、自分自身の品位を下げる上に、招待してくれた新郎もしくは新婦の評判を落とすことにもなります。
自分だけではなく周囲にも迷惑をかけるので、下ネタは避けましょう。
暴露話
誰にでもあまり人に知られたくない話は持っているものです。
あなたは「微笑ましいエピソード」と思っていても、本人にとっては忘れ去りたい思い出だったり、人に知られたら困る話かもしれません。
また他人の暴露話を口にする人は、「あの人は秘密を守れない人だ」という評価を受けてしまいます。
末永く関係を結びたい人のまで他人やその人の暴露話をするのはやめましょう。
信用を損なうおそれがあります。
まだあるこんな忌み言葉
「重ね重ね」など、同じ言葉を繰り返すのは婚礼の場では忌み言葉とされています。
これは「繰り返す=再婚」を想起させるからだといわれています。
「重ね重ね幸せになることをお祈りします」といった言葉ではなく、「今以上にもっとお幸せに」というように言葉を変えましょう。
そのほか、「いろいろ」「くれぐれも」「日々」「わざわざ」「みるみる」という言葉も重ね言葉として忌み語に分類されます。
気を抜くとつい使ってしまいそうな言葉ですので、婚礼の場での挨拶は事前に紙に書き出して練習しておいた方が失敗が少なくて済みます。
また「去る」「帰る」「終わる」という言葉も婚礼の場では忌み言葉とされています。
そのため終わりを告げる際には「これで終わりです」とはいわず、「お開きにさせて頂きます。」と言い換えることが多いです。
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