自分で自分を傷つけてしまう行為を「自傷行為」といいますが、一口に自傷行為といっても様々な行動パターンがあります。

しかもなぜ自傷行為にはしってしまうのか、その原因や心理も様々です。

 

ただ単に「自傷行為をやめろ」というだけでは治りません。

自傷行為に走る背景についてしっかりと理解しなければ問題は解決しないのです。

 

この記事では自傷行為の種類や原因、心理についてくわしく解説します。

子どもだけではなく大人についてもご紹介しますので、ぜひ参考にして下さい。

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自傷行為とは

 

自傷行為に当たる行動を解説しています。

手首をリストカットする

自傷行為の代表例はリストカットです。

 

自分の手首をナイフなどで切ります。

 

普通は「痛いだろうな」と想像して辞めたりしますが、リストカットをするまで心が壊れている場合は、痛みがあるかどうか関係ありません。

 

痛いとか痛くないの問題ではなく、「これで楽になれるのだろうか」「もうどうでも良い」という心境に追い詰められているため、現実から逃れたいためにリストカットを行うのです

 

無意識に髪の毛を引っ張る

リストカットまで進んでいませんが、無意識に髪の毛を引っ張る行為は自傷行為に当たります。

 

髪を引っ張る強さにもよるかもしれませんが、どうしよもない現実に置かれた時、その現実を直視することができなくて、髪の毛を引っ張ってしまうのです。

 

髪の毛は乗り越えなければならない問題の代用となっており、それを引っ張ることでどうにか耐えているような状態なのでしょう。

 

痛みを感じるくらい引っ張るのは、問題に対して解決することのできない自分への葛藤や動かせない現実への不満など、複雑な気持ちが入り混じっているために起こります。

 

歯をくいしばる

自傷行為としては小さいほうですが、歯をくいしばる行動も当てはまります。

 

スポーツ選手が歯をくいしばる意味とは少し違いますが、どちらも「我慢をする」という意味で同じ行動です。

 

歯をくいしばるのは、かけられた言葉を我慢して聞く。

 

言い返したいけどその気持ちを飲み込む。そんな時に見られる行為で、誰でもよく行っているため自傷行為だと思われていません。

 

でも、歯をくいしばるのは歯茎を痛めたり、噛み合わせの問題に発展することもあるため、あまり放置しておける状態とは言えないでしょう。

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似て非なるもの!自傷行為と自殺願望の違いとは

 

自傷行為と自殺願望の違いを説明しましょう。

 

現実をリセットしたいのが自傷行為

自傷行為は、現実に絶望していることから行動に及びます。

 

そこには「すべてをリセットしたい」という気持ちがあり、自殺行為に当たります。

 

自傷行為がエスカレートすれば、命が絶たれることも否定できません。

 

なぜならそれは、実際に行動に移しているからです。

 

言葉の表現として「自傷行為」と聞けば何か曖昧さも残りますが、「自殺行為」と聞くと驚く人がほとんどでしょう。

 

そのため漠然とした違いがあるような気もしますが、自傷行為=自殺行為です。

 

「死にたい」という希死念慮

自殺願望は、心の奥に絶えず「死にたい」という気持ちがあることです。

 

自殺願望こそ自殺行為に関係していそうですが、願望を持っているだけでこれには当てはまりません。

 

心の中で願望を抱いているだけなので、行動に移していないことがそれを証明しています。

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自傷行為に及んでしまう原因は何か

 

では、なぜ自傷行為に及んでしまうのでしょう。

 

心の痛みをすり替えている

自分を傷つけることで、心の痛みをすり替えています。

 

本当はもっと○○したい。こから助けて欲しい。

 

そういう感情も持っていながら、どうすることもできない現実を前にして自傷しているのです。

 

そのため辛いことがあると繰り返して行われ、何度もリストカットの痕が残っている人もいます。

 

現実からの逃避方法として自傷行為しか思いつかないので、行き詰まった気持ちがそういう行動に走らせてしまうのかもしれません。

 

消化できない気持ちと依存

自分の中で消化できない気持ちがあると、モヤモヤした状態が続いてしまいます。

 

どうすれば良いのかわからない。自分ではもうどうすることもできない。

 

そんな苦しい気持ちを吐き出す場所もなく、そうかと言って外へ向かって攻撃することもできない。

 

心の弱い部分が自分に向かい、「何もかも終わらせたい」という衝動から自傷行為に出てしまうのかもしれません。

 

自傷行為を行う人の多くは、何かに依存しているケースも見られます。

 

例えば配偶者の収入だったり、地位や権力だったりする場合もあるでしょう。

 

依存しているからこそ、依存しているものに対して強い態度に出ることができず、自分を傷つけることでしか気持ちを表すことができないのです。

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子供が自傷行為を繰り返す3つの心理

 

子供が自傷行為を繰り返すのは理由があります。

 

 

愛情不足からくる「かまってちゃん」

親の愛情が不足すると、子供は自傷行為を行うようになります。

 

何を持って愛情不足と言うかそれぞれですが、親が愛情を示していても子供に伝わっていなかったり、それを受け取ることができなくて誤解が生じている可能性もあります。

 

経済的な事情で構ってあげる暇がなかった。そもそも父親と母親は険悪だった。

 

家庭内が平和でない場合は、愛情不足からくる「かまってちゃん」になります。

 

自分をもっと見て欲しい。本当はこんなに寂しい。

 

親の気持ちを引こうとして、意図的に自分を傷つけているのでしょう。

 

いじめに対するSOS

学校でいじめを受けている。

 

でも、誰にも言えない。

 

そんな状況下に置かれた場合も、自傷行為に向かう場合が多いです。

 

先生は何もしてくれなかった。

 

心配をかけたくないから親には言えない。

 

そんな心理が働いて、自傷行為をすることでしか現実を示すことができません。

 

本当はその状況に気づいてあげられることが必要でも、自傷行為をしていることは、病院へ行かなければならない段階になるまで気づかないことがほとんどです。

 

自閉症や発達障害

自閉症や発達障害などの障害を持っている場合も、自傷行為を起こします。

 

なんで自分にはできないんだ。

 

こんな状態で生まれてこなければ良かった…。

 

そう考えるようになって行動に移すのでしょう。

 

自分の病気について理解していても、その病気のせいで現実に適応できない状況に苦痛を感じるのです。

 

発達段階にある子供は繊細なので、傷つけられた心の痛みを自分で処理することができません。

 

唯一できることとして、自分自身を傷つける行為に発展してしまいます。

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実は自傷行為は大人になっても治らない人が多い

 

大人になっても治らない自傷行為について解説しています。

 

幼少期のトラウマから自責の念に苛まれる

父親に暴力を奮われた。

 

できないことで厳しく叱られた。

 

こういった幼少期のトラウマは、大人になってからも消えません

 

自分では覚えていない場面もあったりしますが、同じように暴力を振るわれたりすると、そのトラウマを思い出してしまいます。

 

自分が悪いからこうなってしまった。

 

自分のせいで…。

 

そう自分を責めることによって、それが自傷行為へと行き着いてしまうことがあるのです。

 

原因が自分でなかったとしても、トラウマによって重なった現実がマイナス方向へ引っ張っていくのでしょう。

 

そのため逃れられない気持ちが蘇ってくるため、自傷行為へたどり着いてしまいます。

 

ストレスや妄想に追われている

理不尽な状況。

 

信じていた人に裏切られた。

 

人はいろいろなことでストレスを受けます。

 

その出来事が強ければ強いほど心の負担は大きくなって、抱えきれないまでに膨れ上がるのでしょう。

 

ただ、ストレスが一定の量を超えると、自分を保つことができません。

 

前にも進めない。後ろにも引き下がれない。

 

そんな状況にどんどん負の感情が心に溜まってきます。

 

そのうち妄想に追われるようになって、誰に言われてなくても周囲の人が敵に見えたり、孤独に陥っていると思い込んでしまうのでしょう。

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うつ病をコントロールできない

うつ病を発症すると、心のコントロールすることが簡単ではありません。

 

普通の人と同じ日常を送ることが難しいため、些細なことでも傷ついてしまいます。

 

また、毎日が沈んでいう夕暮れ時のような状態で、心の中に憂鬱な気持ちが蔓延しています。

 

そうなってくると、生きていくための希望を見つけることができません。

 

夢や目標もなければ、生きる恐怖感に縛られている可能性もあります。

 

このうつ病をコントロールできない状態が自傷行為へと繋がっていくのです。

 

自傷行為の主な3つの種類

 

自傷行為の種類を解説しています。

 

刃物によるアームカット

刃物(カッターナイフ・ハサミ)によるアームカットでは、手首を切りつけて自傷行為を行います。

 

これらの刃物は家庭にあるため、誰でもすぐに手に入れることが可能で、簡単に肌を傷つけることができるでしょう。

 

多くは自分の部屋で実行する場合が多く、人によってはお風呂場で行ったりもします。

 

タバコによるやけど

火の着いたタバコを押し付けることもあります。

 

タバコの表面温度はかなり高く、場合によっては重度のやけどになる場合もあるでしょう。

 

これも簡単にできるため、出血しないことから選ばれることが多いです。

 

過剰なダイエットからの過食や拒食

過剰なダイエットから、過食や拒食が引き起こされることもあります。

 

食べればお腹が満たされます。

 

その満たされた満腹感で自分を誤魔化すことが過食で、その反対に食べないことで気持ちを支配することが拒食です。

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身近な人の自傷行為の対応を間違えないで

 

自傷行為の対応についてまとめてみました。

 

ハグをして気持ちを受け止める

人はハグされると不安が薄まります。

 

どんなに不安定な人でも、誰かに抱きしめてもらうと安心感を得られるからでしょう。

 

それは赤ちゃんがお母さんに抱っこしてもらって、泣き止む現象と同じです。

 

ほっとして心の緊張を緩めることで、自分の気持ちを受け止めてもらえたように感じられます。

 

「あなたのことを大切に考えているんだよ」という気持ちも伝わりやすく、いちばん効果が高いとも言われています。

 

叱責をしてはいけない

これがどんなに悪いことかわかってるの?そう本人を叱責してはいけません。

 

どれだけ大変なことかはわかっています。

 

わかってはいても、その時はそれしか方法が思いつかなかったのですから、責めるような言葉はNGです。

 

余計に追い込まれたり、気持ちを不安定にさせることにもなるので、冷静に質問するようにしてください。

 

お互いにヒートアップすることが最も注意です。

 

だからと言って放置するのではなく、味方になってあげましょう。

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自傷行為は専門医に相談して適切な治療をしよう

 

治療方法をご紹介しましょう。

 

自助グループによる対話療法

精神科や心療内科では、同じように自傷行為に及んだ人たちで自助グループを作っています。

 

なぜ自傷行為をしてしまうのか。その時はどんな気持ちなのか。今はどんな状況なのか。

 

お互いに話し合って心を打ち明けることで、気づける部分もあるでしょう。

 

対話をすることで心を解放して、抱えていた感情を和らげていくのです。

 

 

カウンセラーに話をする

ただ話をするだけですが、カウンセラーに話すことで気持ちが軽くなります。

 

カウンセラーは共感し、本人の気持ちに寄り添ってくれるでしょう。

 

その上で、その人に合った神経伝達物質の薬を処方してくれます。

 

幸せを感じられるセロトニンが含まれる薬。

 

沈んだ気持ちに作用するドーパミンを含む薬など、薬を飲むことで気持ちの安定を期待することができるのです。

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