「戦々恐々」という文字があります。

読んだことがあるという人も多いかも知れません。

 

なんとなく漢字からはイメージがつかめるものの、実際にはどんな場面で使えばいいのかよく分からないという人も多いのではないでしょうか。

それにちゃんとした意味がわからず「何となくイメージで」使っていませんか?

 

この記事では「戦々恐々」という言葉の読み方や使い方、知っておくと語彙力アップにつながる類語や対義語を解説します。

知っておくと、意外に役立ちますよ。

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戦々恐々の読み方と意味を確認

 

まずは基本的な「戦々恐々」の言葉の読み方と意味について解説します。

 

戦々恐々の読み方

まず戦々恐々の読み方ですが、「せんせんきょうきょう」と読みます。

「戦」という文字は音読みでは「せん」ですが、訓読みでは「いくさ」「たたかう」「おののく」となります。

「恐」という文字は音読みでは「きょう」、訓読みでは「おそれる」「こわい」と読みます。

 

戦々恐々の意味

戦々恐々の意味ですが、恐れおののく、恐れのあまりびくびくする様子などを指します。

同じ意味の言葉の音読みが二重に重なることで、より「恐れる」という状態を強調する言葉になっています。

「々」という文字は「繰り返し」あるいは「同じ」という意味を持つ言葉です。

 

戦々恐々の出典

四字熟語とは、ただ単に4つの言葉を並べただけではなく、その4つの漢字だけで様々な意味を表現する言葉です。

最近では漢字四文字で簡単に状況を説明したりすることにも使用されますが、中国の故事や古典に由来する四字熟語もあります。

 

中国の古典に由来する四字熟語は、短い言葉の中に様々な思想や意味を表現することができるので、たくさんの情報を詰め込むことができる便利なものです。

 

「戦々恐々」という言葉は最近できた四字熟語ではなく、中国の古典に由来を持つ典型的な四字熟語と言えます。

 

戦々恐々という言葉ですが、『詩経』の中の一遍、「小雅・小旻」が出典となっています。

 

「戦戦兢兢、深淵に臨むが如く、薄氷を履むが如し」という一説がその由来と言われています。

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戦々恐々の品詞表示の形動タルトとは何?

 

形動タルトとは、タルト型形容動詞という意味です。

そもそも形容動詞とは、品詞の1つであり物事の状態や様子を表現する言葉です。

限りなく形容詞に近い意味合いをもちますが、語尾が活用形になるので形容動詞といいます。

 

「戦々恐々」の場合、形容詞として使用できるものの文章の中で活用する場合に語尾が変化するため「タルト型形容動詞」といえます。

 

通常、「ダ型活用」の場合、命令形はなく未然形「だろ」連用形「に、で」終止形「だ」連体形「な」仮定形「なら」と活用します。

タルト型活用(トタル型活用)だと未然形、終止形、仮定形がありません。連用形「と」連体形「たる」命令形「たれ」の活用になります。

 

戦々恐々という言葉を文章中で使用する場合は、「戦々恐々としている」「戦々恐々とする」というように連用形で用いることが多く、副詞のように使われる場合が多いです。

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戦々恐々の使い方を例文を交えて解説

 

具体的にはどのように「戦々恐々」という言葉を使用できるのか、具体的な例文を交えて解説します。

 

戦々恐々としている

・受験の結果発表をひかえ、クラスメイトは全員戦々恐々としている

・みんなはテスト結果に戦々恐々としている

・仕事上のミスが発覚し、社内は戦々恐々としている

 

・津波警報を聞いて、人々は戦々恐々としている

・兄弟はいつ学校から親へと呼び出しがかかるのか戦々恐々としてる

 

戦々恐々の語尾が「としている」となっていますので、自分の状況を説明するよりも、相手や周囲の状況を説明する場合に使用される表現になります。

 

戦々恐々とする

・社員がいつも以上に戦々恐々とする姿に、何か後ろ暗いことがあるのではないかと疑った。

・いつ秘密がばれてしまうのかと戦々恐々とする

・最悪の事態を想定して戦々恐々とする

 

・暑い日にアイスクリームを机の上に放置してしまい、戦々恐々とする

・初めての国外出張に戦々恐々とする

 

戦々恐々の語尾が「とする」となっており、今現在、まさに恐怖心やおそれのきもちからびくびくしているさまを表しています。

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戦々恐々の語源を漢字の成り立ちから紐解く

 

「戦々恐々」という文字を構成する「戦」という漢字は、「先端が両股に分かれている弓」の象形と、「先端部分に刃がつけられている矛」の象形が「いくさ」「たたかい」「おののく」という意味を持つことから「戦」という文字を形成しています。

 

一方「恐」は「五本指の手」の象形の上に「心臓」の象形と「工具」の象形から「慎み深い様子で工具を手にする」という意味合いの「恐」という文字を形成しています。

 

「おののく」とはすなわち、恐怖や興奮によって心だけではなく手足までも震える様子を示しています。

 

戦々恐々の4つの類語

 

戦々恐々と同じような意味で使用される類語は次の通りです。

 

戦々慄々

戦々慄々(せんせんりつりつ)とは恐怖のあまり全身が震え、おびえている様子を表す言葉です。

「戦慄」という言葉がありますが、この言葉に使用される言葉をさらに重ねることで、旋律よりも深いおそれを抱いている様子を表現しています。

 

例文:戦々慄々として試験に挑む。

 

小心翼翼

小心翼翼(しょうしんよくよく)とは気が小さいあまりに周囲に対してびくびくしている様子を表す言葉です。

本来は慎み深い態度、恭しい態度を示す言葉でしたが、その恭しさがきわまると気が小さいことを意味するということで怯えている様子を表現する言葉になりました。

 

「翼翼」という言葉が慎み深さを意味しています。

そのため全く同じ意味で「翼翼小心」という言葉もあります。

 

例文:小心翼翼とした自分の態度に、ほとほと嫌気がさしてきた。

 

跼天蹐地

跼天蹐地(きょくてんせきち)とは身を屈めて過ごしている様子を意味する言葉です。

つまり身を屈めなければいけないほど、ひどく恐れてびくびくしたり、身の置き所がないほどに心細く感じる様子を表す言葉です。

 

「跼天」とは天の高さとは反比例して背中を丸めて身を屈める様子を指します。

「蹐地」とは大地の上を抜き足差し足であるく様子を指します。

つまり天に届かないようにと背中を丸め、大地の上をひっそりと歩くほどに周囲の様子に警戒している態度を示しています。

 

例文:跼天蹐地して何をするにも周囲の目を気にする。

 

委縮震慄

委縮震慄(いしゅくしんりつ)とは恐怖のあまり身動きが取れなくなっている様子を表す言葉です。

「震慄」とは恐怖に震えるさまを示す言葉です。

また「痿縮震慄」とも書きます。

 

例文:痿縮震慄しこれ以上歩けなくなる。

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戦々恐々の対義語はコレ

 

戦々恐々という言葉の反対の意味で使用される対義語には次のようなものがあります。

 

泰然自若

泰然自若(たいぜんじじゃく)とは落ち着き払い、どんな物事にも動じない態度を示す言葉です。

 

「泰然」が何事にも動じない様子を表します。

「自若」とは何にも驚かず、動じないさまを意味します。

 

似たようなこの2つの言葉を組み合わせることで、よりどっしりと構えている様子を表現できています。

似たような言葉に「鷹揚自若」「従容自若」などがあります。

 

例文:激しい揺れが襲い人々が慌てふためく中、彼だけは泰然自若として避難指示を出し始めた。

 

神色自若

神色自若(しんしょくじじゃく)とは問題が起きても顔色を変えず、動揺せずに落ち着いている様子を表現する言葉です。

 

「神色」は精神の在り方や顔色を示す言葉です。

「自若」は動揺しない様子、何が起きても驚かない様子を意味する言葉です。

この2つの言葉を重ねることで、何が起きても顔色が変わらない、つまり動揺しない様子を意味します。

 

例文:彼は神色自若として相手に対して口を開いた。

 

余裕綽綽

余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)は、ゆったりとして何事が起きても動じない態度や精神状態を指します。

「綽々」がゆったりとしている態度を示す言葉になります。

 

例文:余裕綽綽として相手の様子を観察している。

 

意気自如

意気自如(いきじじょ)とは何が起きても驚いたり恐れたりせず、普段と同じ気持ちを保つさまを表す言葉です。

「意気」は気持ちを表す言葉です。

「自如」は落ち着いている様子を指す言葉です。

 

例文:上司は意気自如として突然の来客にも対応していた。

 

 

湛然不動

湛然不動(たんぜんふどう)とは静かに落ちついており、その様子がゆるがないことを表した言葉です。

「湛然」が気もちが落ち着いている様子を表す言葉です。

「不動」が決して揺るがないさまを表す言葉になります。

 

例文:人の上にたつ人間はいかなる時も湛然不動としていることが求められる。

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戦々恐々と戦々兢々は実は真義に違う意味がある

 

「戦々恐々」と「戦々兢々」、どちらも「せんせんきょうきょう」と読むのは同じです。

本来は戦々兢々という文字を使用していましたが、「兢」の文字の代わりに常用漢字である「恐」という文字を使用し「戦々恐々」と書くことが多いです。

 

もともと「兢」という文字は音読みで「きょう」訓読みで「おそれる」「つつしむ」という意味を持つ漢字です。

対して「恐」 も音読みは「きょう」ですが、訓読みでは「おそれる」「おそろしい」「こわい」と読む漢字です。

 

違いは訓読みだけではなく、字形にもあります。

「兢」の漢字をよく見ると、人が並んで祈りを捧げるように頭を下げているようにも見えますよね。

つまり「兢」の示す「おそれる」「つつしむ」とは、人が膝を折って神仏に畏敬の念を抱いている姿を意味する漢字になります。

 

一方で「恐」にはおそれたりこわがったりするという意味は同じではあるものの、そこに人を超越した存在に対する厳粛な畏敬の念はありません。

そのため神仏に祈るような切羽詰まった状況でもない限り、「戦々兢々」の表現は使うのに適していないといえます。

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