「おこがましいとは思わんかね」
こんなセリフをテレビドラマなどで耳にした事はありませんか。
良く上司役の人が部下や後輩に使っていたり、ビジネスシーンでも良く耳にする言葉かもしれませんね。
今回は「おこがましい」という言葉の意味や語源、例文などについて詳しく見ていきましょう。
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目次
おこがましいとはどういう意味?
まずは「おこがましい」という言葉の意味から見ていきましょう。
おこがましいとは「馬鹿馬鹿しいくらい生意気で調子に乗っている」「生意気で愚かである」という状態を表す意味があります。
その他にも「身の程知らず」という意味もあり、主に「おこがましい」は自分自身の行為や発言に対してへりくだった表現をする際に使われる言葉として、使用されます。
例えば「このような事を言うのはおこがましいのですが・・」という発言は「このような事を言うのは身の程知らずだと思われるでしょうが・・」という、相手を敬うような発言になるのです。
自分の立場を把握し、相手を尊敬・敬うような発言の際に用いられるのが「おこがましい」という言葉になのです。
おこがましいの語源をチェック
次に「おこがましい」の語源についてチェックしていきましょう。
おこがましいは漢字で書くと「烏滸がましい」という漢字になります。
元を辿ると「古語」に由来すると言われています。
おこがましいの「おこ(烏滸)」は「をこ」と本来は書きます。
「をこ」とはそもそも「馬鹿」などと人を罵るような言葉ですが、「烏滸」とは中国後期の時代に揚子江や黄河に集まるうるさい人々の事を指していました。
「をこ」は「烏滸」の他に「痴」「尾籠」と書く事もあります。
なぜ「烏滸」かというと、うるさい人々の事をやかましいカラス(烏)に例え、水際を意味する(滸)を用いて「烏滸」となりました。
ここから「おこ」という言葉にその状態に似ている事を指す「がましい」という接続語が付いて「おこがましい」という言葉が生まれたのです。
この「○○がましい」という言葉には「未練がましい」「晴れがましい」「押しつけがましい」「馬鹿馬鹿しい」などの言葉が存在します。
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おこがましいの類語は意外に多い
意外に古い由来の「おこがましい」という言葉ですが、次におこがましいの類語についていくつか見ていきましょう。
僭越(せんえつ)
「僭越ながら~」という言葉を耳にする事があります。
この言葉は「自分の地位や立場をわきまえずに出過ぎた事をして」という意味があります。
ちなみに僭越の「僭」という漢字には「身分をわきまえずに調子に乗る」という意味があり、「越」は「自分の力量を越える」という意味を持っています。
この二つの意味から上記のような意味を持つ言葉となりました。
つまり「僭越ながら~」という言葉は「私のような人間がこのような事をするのは身に余る思いだ」という自分をへりくだたせた「思い」が含まれているのです。
差し出がましい
「差し出がましいようですが~」などという使い方を良くしますが、「お節介」「出しゃばって」という意味があります。
厚顔(こうがん)
厚顔(こうがん)は読んで字のごとく、「顔が厚い=顔の皮が厚い」という事です。
つまり「面の皮が厚い」「図々しい」「厚つかましい」という意味があります。
「厚顔無恥(こうがんむち)」という言葉がありますが、これは「厚かましくて、恥知らず」という事になります。
生意気
「生意気な小僧」「生意気な人」など人の事を指す際に使われる「生意気」ですが、「自分の能力や地位がふさわしくないのに、そのようなつもりで振舞う」という事を指します。
分不相応(ぶんふそうおう)
自分の身分や地位を越えている事を指し、自分の能力以上の事をし、身の丈に合わない事をしているという意味になります。
図々しい
人が何と思おうと自分には関係ない、厚かましいという厚顔と同様の意味を持ちます。
このように「おこがましい」の類語は多数存在し、私達の身近な会話で良く耳にするものばかりかもしれません。
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差し出がましいとの違いはコレ
おこがましいと似た様な言葉に「差し出がましい」という言葉があります。
「おこがましい」と「差し出がましい」との違いについてお話していきます。
まず「差し出がましい」という言葉について少しお話すると、古語である「出過ぎた事をする」という「差し出づ(さしいづ)」という言葉に接続語である「○○がましい」が付く事で「差し出がましい」という言葉が生まれました。
差し出がましいの意味としては「出過ぎた事、度を過ぎて他人の事に関わる事」を意味しています。
「おこがましい」ととても良く似ているのですが、違いを例文を用いて見ていきます。
まずはおこがましいの例文:「大変おこがましいのですが、その役を引き受けさせていただきます。」
次に差し出がましいの例文:「今回の事は差し出がましいのではないでしょうか。」
この二つを見て言える事はおこがましいについては、「自分」が申し訳ないのですがという気持ちが前提の下で話をしているのに対し、差し出がましいは「相手」に対して申し訳なく思わないのかという、自分以外に対しての言葉になっているという事です。
差し出がましいは他の例文も見ると「差し出がましいようですが、もう一度お話していただけませんか」という例文もあります。こちらは「自分」の事に対して「差し出がましい」を使用しています。
つまり違いとしては「おこがましい」は自分自身に対して使用し、「差し出がましい」は自分自身だけでなく、相手に対しても使われる言葉という事です。
これが「おこがましい」と「差し出がましい」の違いになります。
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おこがましいは自分謙遜するときに使う
では次に「おこがましい」を使用する際はどのようにして使うかを見ていきます。
おこがましいは「自分自身において、出過ぎた行動や言葉に対して使う」言葉になります。
例えば「おこがましいお願いで申し訳ないのですが・・」と目上の相手や尊敬する人に対して使用する形になります。
その為、相手の事に配慮し、自分をへりくだたせた表現、謙遜している場合に用いられる使い方をします。
もし目上の人や尊敬に値する人が間違った発言や表現をしていた場合、年下や後輩にあたる自分自身が注意をするのは少し気が引けますし、申し訳なく感じたりしますよね。
その際に「おこがましいようで」などという言葉を使う事で、相手に謙遜している気持ちを伝える事が可能なのです。
上司や取引先などビジネスでの使い方
ビジネスシーンでも良く使用される「おこがましい」ですが、その使い方について見ていきます。
例えば「私などが○○さんにお話するのはおこがましい事ですが・・」などと意見する場合、特に目上の人や取引先、上司などに謙遜して付ける言葉になります。
特に話をする前置きで使用される事が多いです。
この「おこがましい」があるのとないのでは、ニュアンスが全然異なってきます。
おこがましいは「自分などが○○さんに意見するのは、大変分不相応なのですが・・」という意味になりますので、目上の人に敬意を払って使用しているのが分かります。
その他にも「こんな事を言いますが、寛容に受け止めていただければ」という自分をへりくだたせつつ、自分の気持ちも含まれているのです。
こう見ると日本語の奥深さが垣間見える気がしますね。
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おこがましいの4つの例文を紹介
ここで「おこがましい」という言葉を使った例文をいくつかご紹介していきます。
私などのお願いを聞いていただき、大変おこがましいのですが。
「私のお願いを聞いていただいて、大変恐縮しているのですが」といった内容で、相手にお願いを聞いていただいて感謝していますというような気持ちを伝える意味も含まれています。
おこがましいのは承知ですが、先ほどのお話をもう一度お聞かせ願えないでしょうか。
「図々しいお願いで申し訳ありませんが、先ほどのお話をもう一度聞かせていただければありがたいのですが」という内容です。
相手へ感謝と申し訳ないという気持ちを伝える為に使用しています。
彼のおこがましさに呆れています。
相手に対して「図々しいにも程がある」という事を伝える為に使用しています。
おこがましいお願いで申し訳ございません。
図々しいお願いをして申し訳ありませんという謝罪の意を、更に丁寧にするために使用しています。
このように4つの例文を見てみると、相手に対して謙遜し、「感謝」や「謝罪」の気持ちを伝える為に使用しているだけでなく、相手に何かを依頼する際にも用いる事が出来る言葉だと言う事が分かりますね。
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おこがましいとは思わんかねは名場面のセリフだった
最後に「おこがましいとは思わんかね」というドラマなどでも良く耳にするとお話したこのセリフについてお話します。
この言葉が最も有名になったお話と言え、漫画家「手塚治虫」の代表作である「ブラック・ジャック」です。
話の内容を詳しく知らない人でも「ブラック・ジャック」の名前くらいはご存知の方も多いのではないでしょうか。
ブラック・ジャックはブラック・ジャックと呼ばれる表舞台には決して立たない名医が多額の報酬と共に無理難題な病気を治療・手術するというお話です。
「おこがましいとは思わんかね」の名セリフはこのブラック・ジャックの「時には真珠のように」というお話から生まれたものです。
ブラック・ジャック(以下:BJ)は幼少期に不発弾にて身体がバラバラになり、それを治療した恩師に「本間丈太郎」という医師がいました。
この事がきっかけでBJは医師を目指す事になるのですが、この回でのエピソードで殻に包まれた「メス」がBJの元へある日届きます。
差出人は「J・H」と記されており、それが本間からの物だとBJは気づきます。
急いでBJは本間医師の元に向かいますが、そこには布団で寝たきりの恩師の姿が。
そこでBJはこのメスが昔、自分がBJの手術を行った際に体内に置き忘れたメスだと言う事を本間医師から聞き、本間医師は謝罪します。
この医療ミスがきっかけで、本間医師は人間の神秘と医学の難しさに気づいたのでした。
謝罪を終えた本間医師は意識が遠のいて行きます。
遠のく意識の中で発したセリフが、「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」という言葉。
その後、病院へ搬送された本間医師を治療しようとしたBJでしたが、死因は「老衰」。
最後にBJは「あなたの言う事は正しいが、私は医者だ」という言葉を発し、本間医師を救えなかった自分に悲嘆し、届いたメスを崖から投げ捨てるという有名な話があります。
このエピソードと名セリフからは「生命の神秘よりも人間の医療の行き過ぎた行為が、命の在り方や人間の死への尊厳を傷つける行為になるのでは」という問題提起も含まれており、
またこのセリフによって生命の神秘に対する医者としての敬意を感じる作品になっています。
名セリフもここから生まれ、時に形を変えて「敬意」を込めた意味でもあらゆる場所で使われるようになったのかもしれませんね。
おこがましいに関して、意味や類語、例文等をお話していきました。
自分をへりくだたせて、相手に敬意を払う意味でも使用される「おこがましい」という言葉。
間違った使い方をしないよう、正しく美しい日本語を使いたいものですね。
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